今年度の自衛隊の殉職者は27人と大増加
 ー防衛省・自衛隊はその死亡原因を明らかにせよ!

 

防衛省は、今年度の「自衛官殉職者」の死亡原因を明らかにすべきだ! というのは、昨年11人、一昨年9人に比べて、今年の殉職者27人というのは異常な増加だ(戦後の統計では一挙に2099人。ちなみに、この殉職者には自殺者は含まれていない)。(写真は2014年度の防衛省追悼式典)

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政府答弁から

「公務に起因して死亡した自衛隊員数は、平成二十七年三月三十一日現在で、陸上自衛隊員が千二十五人、海上自衛隊員が四百十六人、航空自衛隊員が四百九人及び内部部局等(防衛省に属する機関のうち、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を除く。)に所属する自衛隊員が二十四人である。また、死亡の原因別でお示しすると、「車両事故」が三百五十三人、「航空機事故」が五百八十六人、「演習訓練」が三百九十四人、「艦船事故」が四十一人及び「その他」が五百人である。

 お尋ねの「自衛隊の任務及び訓練等の特性」と自衛隊員の公務に起因する死亡との関係については、自衛隊の任務及び訓練は多種多様であることから、一概にお答えすることは困難である。

 お尋ねの平成二十七年五月十四日の安倍内閣総理大臣の記者会見での発言については、自衛隊発足以来、多くの自衛隊員が任務中に公務に起因して亡くなられているとの事実を踏まえ、自衛隊員はこれまでも危険な任務に当たっているとの認識の下、行ったものである。」
http://www.shugiin.go.jp/…/itdb_…/html/shitsumon/b189246.htm
 

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拙著『自衛隊 この国営ブラック企業―隊内からの辞めたい 死にたいという悲鳴』
第3章「自衛隊は元祖ブラック企業だった」から

訓練・リンチによる死と殉職
 
 最近、マスメディアの中で当たり前のジャーナリズム精神を発揮しているのが、地方紙を除くと東京新聞以外にはなくなっているが、この東京新聞が最近、驚くほどのスクープを発表している(2014年7月6日付)。

 報道によると、自衛官の「教育訓練中」の死亡事故が、「消防士の3倍、警察官の7倍以上」になるという。これを具体的に2004年度から2014年5月までの期間で見ると、自衛官の教育訓練に絡む死亡事故は計62件発生、同じ時期での警察官の死亡事故は9件、消防士は04度から12年度で10件あったという。この年平均の事故件数を、各組織の定員で割った事故率で計算すると、記述のように自衛官の死亡事故数は、消防士の3倍などになるのだ。

 さて、防衛省による教育訓練中の事故の内訳だが、47件が陸自、9件が海自、6件が空自ということだが、この事故原因には大きな問題が潜んでいる。死亡事故には、海自の「潜水訓練中」の事故や空自の「捜索訓練中」の事故という、武装集団である自衛隊に伴う事故も見受けられる。

 ところが、この「教育訓練中」の事故の約半数が、「持続走訓練中」の死亡という驚愕する実態が出ているのだ。例えば、「第5施設団の1等陸尉が持続走訓練中に意識不明となり死亡」(2013年7月30日)などで、「持続走訓練中の意識不明・死亡」が繰り返されている。「持続走」とは、言うまでもないが、持久走、長距離走のことであり、陸自では「武装」しての長距離走が行われている。

 さて、この状況から明らかになるのは、消防や警察に比べて自衛隊の「緊急救命措置」のまったくの不十分性であり、現場指揮官の「医学的知識」の圧倒的不足である。と同時に、筆者の経験からすれば、持続走訓練中に倒れた隊員に対して、救命措置を優先するのではなく、「根性論」で対応しようとする風潮だ。

 「指導」と「パワハラ」の区別が付かないように、自衛隊はここでも「医療的措置」と「厳しい訓練」との区別がつかないのである。つまり、旧日本軍の精神主義に未だに囚われている、それを引き継いでいるということだ。

 ところで、この防衛省の教育訓練中の死亡事故には、海自の「特別警備隊」での「格闘訓練中の死亡事故」も含まれているが、これなど「教育訓練中の死亡」ではなく、暴行による殺人だ。同じ「徒手格闘訓練中」の死亡事故は、陸自でも起きているが(北海道の「命の雫」裁判・遺族の勝訴)、これも暴行による殺人である(後述)。

 こういう暴行による殺人の被害者を、自衛隊が「殉職者」として処置しているかどうか不明だが、自衛隊においては「任務遂行中」の殉職者はきわめて多い。ある意味では、「ブラック企業」さえ遥かに及ばない危険な職場である。

 東京・市ヶ谷台の防衛省内には、メモリアル・ゾーンという区域があり、そこには自衛隊殉職者の慰霊碑が設置されている。毎年の殉職者は、遺族を招いて慰霊祭が執り行われるが、2013年には、9柱(陸5柱・海3柱・防衛医大1柱)の顕彰がなされている。創設以来の自衛隊の殉職者は、1840人(陸1010柱・海402柱・空403柱・その他25柱)である。 この戦後の殉職者数は、年平均にすれば、約27柱ということになる。もっとも多い時期には、1年に約40人前後が殉職していたが、それに比べると最近は少なくなってはいるかもしれない。

 先に、消防士・警察官との、訓練中の死亡事故の比較を行ってきたので、この殉職者の比較も見てみよう。
 警察官の殉職者は、統計で分かる2003年から2006年までには、年に3~5柱、戦後では、計217柱である。消防士は、年によって大きな差異があり、最近では、2008年5柱、2009年7柱、2010年8柱である(戦後の統計は不明)。なお、消防士の殉職は、2004年には23柱で、東日本大震災では、それ以上の殉職者(消防団を含めて)が出ていることはよく知られている。

 これを見ると、もっとも危険な職業は、消防士ということになるが、その消防士でさえ、最近の統計では、自衛隊ほど殉職者はいなくなっている。自衛隊と警察官との比較で言えば、自衛隊は警察官のおおよそ9倍も危険な職業ということになる。しかも、訳の分からない、というよりも、人命軽視で発生する「教育訓練中の死亡」や、暴行による死亡(殺人)が最も多い職場なのである。
 

 自殺者の増大を放置する防衛省
 

『自衛隊 この国営ブラック企業―隊内からの辞めたい 死にたいという悲鳴』
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-907127-11-4.html

http://news.nifty.com/…/govern…/yomiuri-20151017-50130/1.htm